好きなことは自立して生きる力になる

日曜日に久しぶりに、写真整理をしていたら、懐かしい患者様との写真が出てきました。

この写真の患者様は2年前に亡くなられました。
以前勤めていた治療院から、20年近く付き合わせていただいていました。

「若々しくて歳とらはらへんねー」と私が言うと、いつも最高の笑顔で応えて下さる患者様です。

軽い知的障害があり、水虫から感染症を起こし蜂窩織炎になられたのでしょう。処置が遅れて、病院に救急で運ばれ、右下肢を大腿から切断されていました。
体重が重かったためか、理解力が足りなかったためか、当時、まだ60代の若さにもかかわらず、義足を作ることさえなく、ほとんどリハビリもないまま退院、在宅生活を始めておられました。

ご主人と小さな長屋での二人暮らしでした。所狭しと物が置いてある部屋に介護用ベッドが導入されていましたが、ベッドから床に下りるのが大変で、それでも、なんとか下りたり、部屋の外のトイレに行ったり、いざっていうときは台所まで移動されていたように思います。

とりあえず最初はベッドからの移動が簡単にできるように。また台所に立ってご飯を作れるようになることを目標に訪問を始めました。

彼女の場合は、怖さが様々な動作の障害になっていましたので、それを取り除くことだけで、すぐに多くの動作が可能になりました。

彼女と出会った頃の私は、まだまだ未熟でしたが、怖さが半減するように介助するのはそう難しくありませんでした。

それは、立ち上がり、立位、移乗など、本人の行う全ての動作を、腰をキープして助けてあげればよいのです。
腰を中心とする体幹の動きが、こわばったり、筋肉が過緊張することがあれば、私の介助の方向や量が間違っているのです。

うまく安心感を与えてあげることができれば、日常生活動作は格段に広がります。
リハビリは本人が頑張るものではありますが、怖さを取り除くだけなら、こちらのやり方、努力次第でかなり改善がみられます。

自分の家での動作に自立された彼女は、台所でご飯を作ることができるようになられました。

その後は、マッサージをして残った足が痛まないようにしながら、車椅子で散歩に行ったり、4点歩行器という杖で歩行(?)練習をしたりしました。

しかし、そのうち、私は彼女の担当を離れてしまい、彼女との関係が薄くなってしまいました。

その間に、ご主人が亡くなられてお一人になられたり、家を引っ越すことになったり、内科的な疾患から発熱が続いたりと、最終的にはトイレや車椅子の移乗が出来なくなり施設に入所された後に亡くなられました。

それでも彼女のことは、とても印象に残っています。
食べるのが大好きだった彼女ですが、片脚に負担がかかりすぎると食事の制限がいつも課題になっていました。

様々制限をされても、彼女は、大きな体に小さな前掛けをして、お好み焼きを焼いて食べたりされていて、私はそういう自立した生き方が好きでしたし、好きなことにかける気持ちの大切さを見せていただいたように思います。

最後まできちんと関わることが出来なかったことが大きな後悔です。が、本当に楽しく仕事をさせていただいたことを感謝しています。

あの世でご主人と仲良くされてたらいいなと思います。

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