認知症の患者様にマッサージ師ができること

先日、患者様の認知症が進んで来たとご家族様からお話があった、とスタッフから報告がありました。

介護が長くなるとご家族様のライフスタイルも変化して来ます。その変化はダイレクトに患者様の生活にも影響します。
認知症の方の場合、自分の中で出来上がった生活リズムが変化することで、認知症が急に進んでしまうことがあるように思います。

こんな時こそ、少しでも患者様のお力になれるように、マッサージ師だからこそ出来る関わりを模索してもらいたいと思っています。

一番には、やはり身体が痛みや動きにくさがなく、ベストな状態でいていただけるように施術させていただくことじゃないかと思います。

足もとがおぼつかなくて歩くのに怖さを感じたり、痛みがあると身体は常に緊張状態にあり、頭の働きをますます低下させてしまうと考えています。
ですから、とりあえず、全身の緊張を取り除くことに全力を尽くすことが何より大切です。

その次には、座る・立つ・歩くという基本の動作を安心して行っていただけるように取り組みます。

怖さをどこで感じているのか、どこを助けてあげたら安心して座ったり歩けるのか、全くの私見ですが、大切なのは、頭なんだと考えています。頭の位置が身体に対してどこにあるのか、頭を支える力が安定的に働いているか、この二つが大きな要因ではないかと考えて、頚部がある程度自由に動くようにマッサージをし、頭を緊張が一番抜ける位置に支持できるように介助します。

また、なんとか歩ける方の場合は、痛みの原因を全て取り除くことが出来ないとしても、痛みの箇所に、体重がかからないように手助けしたり、足りない筋力を補うような介助をして、一緒に歩くようにしています。
部屋の中をほんの5分でもいいのです。
この先、一人で歩けるようになれないかも知れませんが、安心して歩けたという身体の記憶が脳に安心感を与えることが目的だからです。

このようにして、身体の安心・安定を施術中だけであっても感じていただけるように取り組んでいきます。
もちろん、施術中の動きがその後の転倒等のリスクに繋がることがあるので、ご家族様やケアマネジャーと話しながら進めていかなければなりません。

安心して動けない方に、マッサージ師が出来る関わりというのは、何かを勝ち取るためのリハビリ的関わりでなく、また、お元気な方に対するような、単なる揉み解しによるリラクゼーションでもなく、安心して動けることを目的に身体の緊張を取り除きながら安心して動ける時間の提供をすることではないかと考えています。

動くことに安心感が持てると、多くの場合に、認知症状に変化はなくても、穏やかになって下さる方が多いように思います。

そうなると、多くの方が、30分の施術時間に、嬉しそうに同じ話を何度も話して下さるようになります。
何年も訪問が続くときは、何百回も繰り返し聴くことになるのですが、それが、その方の人生で、一番聞いて欲しい、多分何回言っても言い足りない出来事なのだろうと思います。

ですから、何度も聴くそのエピソードではなくて、その奥にある気持ちに想いを馳せてうかがうように心がけています。
出来るだけ、「またか」と思わないように、初めて耳にする話のように聴くのは簡単なことではありませんが、多分この聴くことが、本当は、マッサージより何より一番の治療になっているような気がします。

長い人生の最後、多くの困難を超えた最後の時間を認知症であっても、笑顔で穏やかに過ごしていただけるお手伝いが少しでも出来たら、本当に幸せなことだと思っています。ですから、同じ話に、たまには違う返事や相槌が打てるよう心を込めて同じ話を伺いたいと思っています。

訪問させていただいている特養のディスプレイ。いつもセンスの良いディスプレイに入居者を大切にしようとされている愛を感じます。

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