按摩術という手技

先週は、いつもと違うもう一つ特別なことがありました。
鍼灸マッサージ師会の催しによく来てくれる25歳の男の子が、マッサージの勉強をしに遊びにきてくれました。

私たち鍼灸マッサージ師は、三療と呼ばれていて、鍼師・灸師と按摩・マッサージ・指圧師の三つの資格はそれぞれ別の国家資格になっています。
専門学校の科は、学校により様々ですが、三療の取得が出来るものから、鍼師・灸師だけを取得できる科と按摩・マッサージ・指圧師だけを取得できる科があります。

私は、按摩・マッサージ・指圧師だけを持っています。
先日遊びにきてくれた彼は、鍼師と灸師だけを持っています。

鍼・灸の治療は、本当に素晴らしいものですが、その効果を出せるようになるには、やはり技の熟練を必要としますから、資格を取ったばかりで、治療効果を出すのは簡単なことではありません。

それに比して、按摩・マッサージ・指圧の技術は、熟練には同じく時間を必要としますが、鍼灸と違い、治療効果が出せなくても、撫でさする心地よさを実感していただくことが出来る手技なので、施術する側も自分のしていることに自信を持ちながら学んでいけるメリットがあります。

また、中国の鍼灸治療の考え方としては、鍼灸治療を出来るようになるまでに、推掌(すいな)という日本の按摩術のようなものを会得する必要があると言われています。
きちんとした治療を施すためには、その対象物をよく知る必要があるということなのだと思います。
鍼灸治療の取穴(ツボをとること)は、皮膚表面の状態観察を指先で探るのですが、按摩術のそれは、筋肉の深い部分にまで指を入れることで状態を把握していくので、未熟な人間にもわかりやすいからじゃないかと思います。

そんなこんなで、按摩術というものを体験してもらうことで、これからの鍼灸治療に役に立てたらいいなと思い声をかけたら、本当に来てくれたのです。

今の私の施術は、自分の仕事に合わせて変化しているものの、手技の基本は按摩術にあります。
按摩術は、親指で押すだけでなく、手を使って出来ることは、全てするというような手技療法の全てが詰まっていると私は、考えています。

身体の曲線に合わせ、どの場所のどの筋肉にも奥まで指が入るように、手首を柔らかく保ちながら、どの角度でも圧を加えることができるようになっています。
また、施術する相手の身体はもちろん、自分自身の身体も常に陰陽のバランスを考えながら、陰から陽への気の流れを大切にした手技になっているのです。

様々な手技のテクニックが考え出される中で、治療ではなく、慰安としてのイメージの強い按摩術は、人気がないように思いますが、本当の按摩術はとても奥深く素晴らしい手技です。

先日来てくれた彼は、「鍼灸の勉強会より、役に立つ気がする」と帰って行ってくれました。
中国の鍼灸の前に推掌を習うということの意味をそのまま実感してくれたんじゃないかなと思います。

ニャンもワンも大好きマッサージです。

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