読書感想、高齢者の心象風景

2月は久しぶりに本に取り憑かれて、数冊の本を読みました。

そのなかで、内館牧子さんの『終わった人』と『すぐ死ぬんだから』は新聞広告で見て、すぐ購入して読んだ2冊です。
高齢者の方からの感想が載っていたので、私の知らない高齢者の心象の世界があるかも知れないと思ったからです。

毎日寝不足になるまで読み続けたのですから、相当面白かったように思いますが、実際の高齢者の心象風景は、もっと奥深く、例えベッドの上がその世界の中心であっても、もっと広いような気がするなぁと思いながら読ませて頂きました。

それは、時には見渡す限り草一本生えない砂漠のような孤独であり、また時にはジャングルのような豊かな思い出の中にあり、あるいは風でさえも壊れそうな繊細な感受性に震えているかと思えば、幹線道路沿いの雑草のように排気ガスをかけられても、誰かに踏み付けられてもへこたれないタフさを持っている――何度聞いても飽きることない世界が広がっているように思います。

これらの本の中では、高齢者になってどう生きるかという問いに対して一つの答えが描かれているのですが、元気な高齢者と、身体の自由がきかなくなった高齢者では、心象風景の深さが違うのではないかと感じました。

元気でいる間は、当然興味の対象が外の世界に向かうので自分の心の奥を深く見つめることはあまりなく、身体の自由の効かなくなった高齢者は、何もできない諦めの中で自分を深くみつめ、それが心の奥深さにつながっていくのではと思ったのです。

もしかすると、作家先生は、出来ることを一つ一つ奪われていった境地にはまだたどり着いていないのかしらんと、僭越ながら感じた次第です。

不自由な肉体を被り、心はますます自由になっていく先に、肉体と別れて魂の世界に旅立てるのかもしれません。

歳を重ねるのは簡単じゃない。見られてると思う自分との闘いをとてもうまく痛快に小説にされているのかなと思いました。

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