呪縛からの解放2〜コリはほぐすもの・関節は伸ばすもの、リハビリはゴールを設定して近づくもの⁉️⁉️

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呪縛その1 過剰な刺激は弊害の方が大きいという確信を得た出来事

寝たきりで手も足も関節が縮んでうまく動かない、身体も弓なりに歪んでしまった患者さんがいらっしゃいました。
それでも、話しかけるとなんとも上品な受け答えをして下さるので、ベッド から起こして座っていただきながらしばらく話をするのを楽しみにしていました。
ところがある時から、ぎゅっと力を入れて腕がちっとも伸びなくなり、手はむくんでパンパンになり、話も出来なくなり、食事も進まず、ついには浮腫みのため、点滴すら入らない状態で入院となってしまいました。

あんなに腕が浮腫んで入院になったのだから、相当悪い状態に違いないと思っていたら、しばらくしてから、元気になって帰って来られたのです。しかも入院前にはぎゅーと力が入って伸びなかった腕が、曲がってはいますが、力が抜けて楽そうなのです。

入院中はリハビリどころではなく、機能訓練はほとんどなかったようでした。それなのに入院前より力が抜けているとは! 私の衝撃は、口では表せないくらいでした。

縮んだ関節を無理な力で引っ張って伸ばされたら、患者さんは身を守るために必死に抵抗し、そういうことが継続すると最後には力の抜き方がわからなくなってしまうので、全体的な緊張を緩和しつつ、緩んだところを無理のない範囲で自動介助運動を行うというのが私の考え方でしたが、時には刺激量が強く余計に緊張を生むこともあり、常に患者さんの状態をチェックしながら施術を続けてきたつもりでした。

ですから徐々に緊張が増えて、身体が硬く閉じていった時に、体調を崩されているのかとか他の理由を考えていたのです。しかしながら、リハビリのない入院中に、こんなに力が抜けたということは、関わりが強刺激だったことに間違いはないように思いました。

私のやり方で長い間、問題なく緩んで来ていたように記憶していました。ですから、もしかしたら、私ではない誰かが引っ張っていたのかもしれないと考えました。私以外にこの方の機能訓練で関わっていたのは、私の交代で行ってもらった、うちのスタッフとデイサービスのマッサージでした。もちろん、私自身が気がつかないうちに強い力になっていた可能性も捨てきれません。

状態が改善しているので「犯人探し」の必要はもうないのですが、私は以前にも増して注意深く施術するようにしました。
入院前より弓なりの身体はますます弓なりになっていましたが、力が抜けてまた話ができるようになってきています。懸命に介護されるご家族のためにも誤嚥や尿路感染を起こさないよう、床ずれにならないように身体の柔軟性を高め、循環がよくなるよう施術を続けました。

ところが2カ月が過ぎた頃に、再び、身体に力を入り、ほんの少しも動かすこともできないくらいになってしまいました。

私の都合がつかない時に代わりに行ってもらったスタッフに腕を無理に伸ばしていないか確認をしました。
たまの代わりなので、患者さんの身体がよくわからないだろうから、無理に腕は伸ばさず、寝返りや座位をとってもらいながら優しく軽擦(なでること)してくるように言っていましたが、縮んだ肘をみると伸ばさなくてはと、本人としては「無理のない範囲で」伸ばしたと言いましたが、明らかに身体に緊張が増したので、そのやり方は、緊張を生むだけでいいことは一つもないと強く注意をして、代わりに行ってもらうことをやめました。
しかし、それでも緊張が抜けるどころかどんどん強くなっていきました。腕を伸ばす以前になんとか身体中の緊張を抜いてもらうので精一杯です。

うちのスタッフ以外に機能訓練に関わっているのは、デイサービスです。デイサービスのノートを見ても何も書いてありません。ご家族に尋ねてもご存知ありませんでした。どうしたものかと考えあぐねていたある日、家族さんが

「昨日看護師さんが来て、少し強引だけど腕がいっぱい伸びましたと言ってくれたんですが、だいぶ痛そうにしていたんですけどね」と困った顔をして話して下さいました。

看護師さん! 訪問看護さんはずっと関わって下さっています。

私から話してトラブルになりたくありませんし、家族さんから言ってもらうのがいいかなと思いましたが、うまく言えるわけもなく、何より患者さんのことを考えるときちんと話をした方がいいと考え、訪問看護の所長さんとは良好な関係だったこともあり、 直接電話をかけました。

「すみません。腕の緊張が高まっている件ですが、実はうちのスタッフがまだ不慣れな面があり、強く注意しておりましたところ、家族さんからそちらの看護師さんがいっぱい伸びたと報告されたそうで、無理に伸ばすと防衛的に余計に力を入れてしまわれるのではないかと考えていまして…」

と切り出しました。人の話をきちんと聞いてくださる所長さんであったこと、身体の緊張が高まったと感じた時期や患者さんの症状の理解が同じだったことなどから、お互いにしばらくは腕の可動域訓練はしないで様子を見て、改善が見られないようなら、別の理由を考えて対策を練り直すということになりました。

この後、この患者さんは、緊張が抜けてきて少し改善が見られてきたかなというところで再入院になってしまいました😢

理解のレベルは様々であっても医療知識を学んできたはずの医療従事者がどうしてこういうことをしてしまうのでしょうか。

それは多分、一つには、廃用的に筋萎縮・関節拘縮をした身体というのは、健康な状態からはどんどんと離れていってしまうからなのだと思います。簡単にいうと、元々あった場所に、違う筋肉があり、動く方向も変わってしまうので、健康人の腕を伸ばすように伸びるという単純なものではないからじゃないかと思います。

その結果、肘の関節拘縮を改善したくて、力づくで伸ばしてしまうと、肘の関節拘縮はほとんど改善せず、その先の肩の靭帯を伸ばしてしまい、肩が亜脱臼してしまうことも珍しくありません。

文章ではとてもうまく説明できませんが、関節というのは全て螺旋状に動くようになっているので、関節拘縮が進むとき、雑巾を絞るように、腕がねじれていくのです。ですからその改善は、螺旋を戻すように関節を伸ばしていく必要があります。
それで、単純に肘を伸ばすように引っ張ると、その始まりの肩関節が外れるように「作ってある」からなのです。
この患者さんの腕がパンパンにむくんだのは、靭帯が伸びてしまったことと防衛的に過剰な力が入ったため腕の循環が悪くなってしまったからじゃないかと思っています。

これは、長年にわたり、廃用性関節拘縮と格闘してきたからわかったことであり、多分教科書にも書いてないのではないかと思うのです。

ただ、患者さんの苦痛、伸ばしたあとの「成果」をきちんと観察していたら、自分の間違いにすぐ気がつくはずではないかと思うのですが、
関節は伸ばすもの・硬いコリはほぐすもの
という呪いにかかっていて、科学的客観的判断が出来なくなってしまうのかなと思っています。

経験の少ないマッサージ師だから、
機能訓練に専門的な関わりの少ない看護師だから、
間違えたと考える方もあるでしょうか?

そうかもしれませんが、そうだとも言えないくらい、無理やり伸ばすとこうなる一例に確信を得てしまうと、他の症例においても過剰な緊張の原因は単なる廃用性ではなく「人為的なもの」ではないかと考えられることが見えてきました。

次回はリハビリの専門家理学療法士の先生との関わりの話をしたいと思います。

個人を非難するために書いているわけではなく、多くの人が似たような呪いにかかっているとわかってもらい、その呪いから解き放たれて欲しく書いております。ご理解のほどよろしくお願いいたします。そして批判・反論お待ちしております。

山肌に映る雲の影って本当にステキ。いつも山が身近に見える京都の景色は訪問仕事中の心の清涼剤です。

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