最終回 呪縛からの解放5〜コリはほぐすもの・関節は伸ばすもの、リハビリはゴールを設定して近づくもの⁉️⁉️

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呪縛その4 コリは揉みほぐすもの。強い力で揉めるマッサージ師は上手い。

「もっと強く揉んでと言われたら、ジーパンの上からでも、例えベルトの上からでも、にっこり笑って押さなあかん」

私が最初に按摩を教わった師匠に言われた言葉です。

「按摩を買う」こんな言葉がまだ生きていている時代(今もそういう風潮はあるのかなとも思いますが)お客さんからバカにされないように、技術が誇れるように、絶対にコリに負けないで押さなければならないと教えられました。(わざと固い衣類を身につけて試すようなことをするお客さんもいたのかなと思います)

按摩を始めたころは、コリに負けずに押し続けたせいで、翌朝は腫れた親指が痛くてものがつかめませんでした。
それで、毎晩、仕事が終わった後は、流水で指が痺れるまで冷やしていました。(これも師匠から教わりました)

そのおかげで、私の親指の関節は、見た目に変形しているとわからないくらい真っ直ぐです。

でも実際には、突き指状態に関節の間を狭くして、体重を乗せれば一本の棒のようにコリに突き刺さる道具のように変形させています。ですから、この指はそんなに強い力で押さなくても、まっすぐに圧がかかるように作ってあります。このように変形さすのに、3年くらいかかったように思います。

私の師匠は男性で力が強い人でしたが、その師匠の師匠という人は、小柄な女の方でした。しかし、とても指が強くて、背中を揉んでもらうと、まるでコンパスの針が背中にプスリと刺さり、クルクルと回っているように繊細にコリに指がまっすぐに入ってくるそんな指でした。

最終的にはその女の方に教えていただいたので、私にとってコリを強い力で揉みほぐすというのは、按摩師としてプロの証明のようなものでした。

私自身が、強く揉めることを追求してきたので、この呪いに気がつくまでとても長い時間がかかり、その事に気がついてからも、強く揉んでほしいと言われると必要ないと言えず、どこまで強い力でほぐすべきかまだ模索中です。

しかしながら、必要以上に強い力で揉むことは、身体に新たな別の問題をもたらす可能性が高いことは明らかなように思います。

強く揉みすぎて、翌日に筋肉が炎症を起こすということがよくニュースになっているように思いますが、それは、多分、その多くの場合は、筋肉の走行を無視し、筋繊維をぶった切るように押圧しているためであって、強い弱いというような問題ではなく、按摩術の基本から外れているから起きる事故ではないかと考えています。(習いたての頃の私がそういうことが絶対なかったとは言い切れないのですが…)

そうではなくて、

コリというのは身体のバランスがなんらかの理由で崩れた結果の不快感であり、そのコリを他の原因を考えずに、その局所だけを丹念に強く揉みほぐした結果に起きる問題について考えています。

例えば

うちのスタッフの患者さんの話です。

若い頃にアキレス腱を完全ではないけれど、断裂した患者さんがいらっしゃいました。
手術をせずにそのままにしておいた足は、つま先立ち歩きになっていて、そのためかその側の肩がこるというのが主な訴えでした。ご本人はとにかく肩を揉んでほしいと言われます。
肩を強く揉むと、満足されるので、施術時間の半分を肩の施術に充て、残り半分で他の部位を施術するようにしていたそうです。

しばらく問題なく、訪問を楽しみにして下さっていたのですが、3年をくらいすぎた頃から、アキレス腱を断裂した側の股関節の痛みを訴えられるようになりました。

股関節痛というのは、先天的な形成異常やスポーツでの過剰な使用や外傷以外があれば別ですが、日常生活で痛めることが少ない関節です。アキレス腱の断裂は何十年も前の出来事であり、そのためとは考えにくく、肩凝りを重点的に揉みすぎて、身体のバランスが崩れたためではないかと考えました。

一般的には日本人の体型で下肢に問題がある時、股関節を外転させ、筋力不足を補います。股関節が開くと肩関節は、そのバランスを取るために自然と閉じるようにできています。

肩関節を閉じた結果、肩凝りを感じるとすれば、開いた股関節の負担を軽減しつつ、肩凝りの軽減をはかるのが大切かと思いますが、つい患者さんの「気持ちいいわ。あんた上手いなぁ。力が強いなぁ」という褒め言葉にのって施術時間の半分(!)を肩に費やした結果、必要以上に肩だけが開いてしまい、開いた肩に合わせるように股関節が閉じてしまいバランスを失った結果、痛みが出現したのではないかと考えました。

施術の配分を変えても、しばらく痛みは続いていましたが、ちょうどその時、内臓疾患で入院され、股関節の負荷が減り、マッサージ施術もなくなり、身体がリセットされたのではないかと思います。退院後は、股関節の痛みの訴えはなくなりました😭。
その後は、バランスの良い全身施術を続けていて、大きな痛みやトラブルなく過ごしていただいているように聞いています。

これはうちのスタッフの失敗ですが、強く揉みすぎることの弊害は長い年月をかけて現れたりするので、継続的な治療をしていないと自分の施術結果はわからないことも多くあるように思います。

痛みが出る前にすでに、身体の変化を感じ、なんだか少しおかしいと思うこともありますが、患者さんの
「もっと強く押してほしい」という要求をはねのけるのはなかなか勇気のいることなのです。

私自身、背中のコリでご飯も食べられない、痛くて立っていられないという患者さんの施術にあたっている時の話です。

その症状を疲労からきているものだと考え、四肢の筋緊張の取り除きながら背中のコリ、痛みの軽減をはかりました。
しかし、なかなか症状が改善せず、背中の張り、コリも改善しません。それで、患者さんからの痛みのあるところをもっと強く押してほしいという訴えのまま、自分の方法が間違ってたかもしれないと考え、私の中の必要と考える以上の強さで施術していました。

しかし、あまり続く痛みを不信に思った患者さんが、改めてMRIの撮影を申し込んだところ、腰椎の疲労性の圧迫骨折後の痛みだったことがわかりました。

普通ではないハリとコリを感じてはいましたが、まさか圧迫骨折が起きていたと考えなかったこと、患者さんに言われ、骨折後の身体を守るために固めていた周囲の筋肉を揉みほぐしてしまったことに大きなショックをうけました🤯しかし、上から押したりせず良かったと心から思いました。もしそんなことをしていたら、他の箇所も圧迫骨折を起こしていたかも知れないからです。

コリを強い力でほぐすという呪いは、本当に大きく根強いものだと思います。

私の経験ですが、普通に老化が進む身体では、その身体の縮み方にある一定の法則があるように思います。

下肢の関節に問題を抱えている、麻痺がある、喘息など肺機能に問題がある。
あるいは、
職業による偏った身体の使い方をされている場合でも、その法則が見て取れます。

マッサージなどの施術は、その崩れたバランスを助けることが第一目的なのでしょうが、強くて多い刺激こそが、「上手い」という呪いのおかげで、法則から外れた、自然な老化ではありえない身体にしてしまうような危険性があると思うようになりました。

これは、マッサージ施術だけではなく、医師による投薬、子育て時の過剰なケアや教育など、あらゆることに当てはまるもので、マッサージ師だけが特別に、先を見通す能力が低い訳ではないと思います。

それでも人様の身体の治療に関わる私たちは、無意識のうちにかかっている呪いから解き放たれ、患者さんにとって真に利益になるような関わりを模索し、その力をつけていくことがプロとしての証しなのではないかと思うのです。

私の親指。親指の付け根は完全に変形しています。

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