マッサージ師を志した理由

ブログの毎日更新を目標にして、一か月がすぎました。毎日はさすがに無理ですが、なんとか続いています。

20代のころ、専門的な技術で、誰かの役に立てたらと、マッサージ師を志しました。社会の矛盾や不平等について頭で考えるより、自分の技術力で役に立てたらと考えたからです。

マッサージ師になる前、内戦が終わった直後のカンボジアを訪れました。日本の援助で送られた自動車が故障すれば、修理出来る技術がなく、ガラクタ同然になるため、日本の自動車修理工の方が技術指導のボランティアをされていました。1年のつもりがもう5年目になると言われていたように思います。技術が架け橋になる援助ってすごいなとマッサージの学校に行きました。

そして、マッサージの専門学校に入学してから、医療保険を使った訪問マッサージというのがあることを知りました。障害老人や寝たきりの人を目にすること自体初めてで、曲がって伸びない枯れ枝のような手足、鼻腔栄養のチューブ、唾液すら思うように飲み込めない方などを見て、大きなショックを受けたのを覚えています。
そして、その生活を支えようと活躍される人たちの存在を知り、私もその一員になりたいと強く願いました。

それから、20年。

在宅介護は普通になり、マッサージ師による訪問マッサージも数多く行われるようになりました。訪問マッサージのチェーン店もいくつも出来ました。その結果、増え続ける医療費を背景に、マッサージ師の保険治療は年々厳しさを増しています。

しかしながら私の中では、時にマッサージというのは、薬よりもリハビリよりも人の生きる力になることがあるとても大切なものだという想いが年々強くなっています。

それは、マッサージが、障害者や老人、神経難病を抱える人にとって、足し算ではなく、ただ一つの引き算になるのではないかと考えているからです。

痩せた、麻痺した筋肉であっても、生命の営みとは、身体を守るために必死に働いているものです。もうこれ以上は頑張れないギリギリの筋肉といのは、全身を強張らせ、結果、血流が阻害され、血液の還流を滞らせます。
そうして、寝たきりや、起居動作困難な方の手足の多くは浮腫んでしまうのです。浮腫んだ皮膚は、治癒力が落ちるので、床ずれなどの皮膚トラブルの原因になりやすいのです。

そういう状態に対して、関節可動域が足りない、筋力が足りないとリハビリを行います。あるいは利尿剤で浮腫を取り除いたり、筋肉の過緊張を和らげるための薬が処方されます。最近の流行りはボトックス注射です。これは、過緊張を和らげるのに、ボツリヌス菌から抽出したタンパク質を注射し、筋肉を麻痺させるものです。
これら全ては足りない状態に対する足し算です。

でも、本当は足りない結果ではなく、働きすぎて状態を悪化させてしまっていることの方が多いように思います。
例えば、力ない手足がダラリと力が抜けてぶら下がっていれば骨折の危険に常に脅かされることになるから、身を固めている方が安全で、そのために手足を縮めているのではないかと思います。ただ、それが度を超え様々な困難な状態になってしまっているのです。

このような状態に対して、マッサージによるゆったりとした刺激は、過緊張を状態にある皮膚・筋膜・筋肉から、緊張を取り除くことができます。緊張を取り除くだけで、伸びない手足は力が抜けるのです。力が抜ければ、関節可動域を拡げることも浮腫を軽減することもそう難しいことではありません。

これには少し熟練した感覚を必要とするかもしれませんが、生命の営みの在りようやマッサージの可能性を常識として知っていれば必ず到達できる技術です。

このような技術の担い手である私たちが、超高齢化社会で活躍できないのは、私たちマッサージ師にとっての損失のみならず、高齢者、そして保険者にとっても大きな損失なのではないかと考えています。

私の声はあまりに小さく、いつ消えるかわからないものです。でも黙って消えたくないという思いで、ブログを書いています。

私の20年の歩みを一番に支えて下さったのは、今いる患者様であり、亡くなられたりご縁の切れた患者様です。数多くの失敗の上に知り得たこれらを、これから高齢者になる方々や、展望を持てないマッサージ師の方々に伝えることが、一番のご恩返しになるのではないかという思いも持っています。

また同意書を書いてくださる医師だけでなく、相談業務をされているケアマネジャー始め関係者の方々や、保険者(つまり行政)の方にもこの声が届いたらと願っています。

こんな想いを持ちながら毎日仕事をし、ブログを書いています。文章を書き続けることは、予想以上に大変ですが、楽しみにしているよと言って下さることが書き続けるエネルギーになります。読んでもらえると本当に嬉しく思っています。どうぞこれからもよろしくお願いします。

うっすらみえる虹。毎日空をながめながら仕事しています

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