Zii-Baa体験研修

悠生治療院の新人スタッフです。
7/14にお年寄り体験研修に参加させていただきました。

以前特養で働いていた時も体験した事はありましたが、15分くらいの短いものでした。
今回は午前中座学の後、午後から約3時間座りっぱなしの体験でした。

車椅子チームと椅子チームに分かれ、手すりに利き手を固定、両足を閉じて足首をガムテープで固定、プラス目を覆って視覚障害体験も合わせて行いました。私は車椅子チームでした。

  

体験で何が一番辛かったかと考えると、孤独な事が一番辛かったです。
目が見えないので体が触れているところ以外は何も分からない状態で、近くに誰かいるのかいないのか分からず、声をかけようにも話しかけていいか分からない状態。耳と口は自由なので普通に喋っても良いのですが、広い室内にぽつんと一人だけ取り残された感覚で、声をあげるのが非常に難しく感じました。

しばらくするとお尻が痛くなり、腰、背中、首とどんどんしんどくなっていき、体全体が硬くなっていくようでした。実際終了後立ち上がると膝の拘縮が少し始まっていました。車椅子上で少しでも楽な姿勢を求めて体を傾けて紛らわせていました。

途中スタッフの方が声をかけて体をさすってくれました。一人ぼっちですごく孤独を感じていたので、声をかけてもらったことが本当に嬉しく、少し体をさすってもらっただけで物凄く体が楽になったような感覚でした。

車椅子チームは外に出る機会もありました。体は動かないですが、空間を移動する事で気持ちがリフレッシュし、後ろに人がいる感覚が孤独感を紛らせてくれました。

体験自体は身体的・精神的に辛いものでしたが、印象に残っているのは声をかけてくださった嬉しさや外に連れ出してもらったありがたさでした。3時間のうちのたった数分の出来事ですが、体の辛さや孤独を忘れられ、もう少し頑張れそうな気がしました。

じっとしている事でこんなに体がしんどくなるのかという事が長時間座る事で初めて実感できたのと、体に触れてもらう事や少しでも体が動く事が、動けない人にとって非常に重要で、とてもありがたいものと実感出来ました。

今私はマッサージの仕事をさせてもらっていますが、この体験を活かしてお年寄りの生きる希望に少しでもなれたらいいなと思います。

信頼を基本にした関係づくり

祇園祭が始まった京都です。
京都では、祇園祭り中に降る嵐のような雷雨が、梅雨明けを知らせるといわれています。

さて今回のブログは最近訪問を始めた患者様のことです。

脳梗塞の後遺症で、左の不全麻痺があります。

不全麻痺というのは、ある程度は使えるけど、麻痺があるので、出来る動作も努力を要するような状態です。

それから、認知症があります。

認知症というのは、単なる年相応の物忘れがあるということではなくて、論理的思考が出来なくて、毎日の生活に支障をきたす状態です。

例えば、ご飯を食べたからもうお腹が空いていないとか、ご飯は決まった時間にもいただくものという考えの基準が変わってしまいます。
お腹がすいていることと食事が関係ないものになってしまわれるようです。
1日何回もご飯が食べたくなったり、目に付いたものを次々口に入れたりされることもあります。

何々だから何々をする、あるいはがまんするということが通じないので、ご本人が望まないけれど、生活上で必要な事をしなければならない時には、困難が伴います。

介護される人は大変ですが、私たちの仕事上では、身体に触れさせてもらえたり、身体を動かす事の必要に応じて同意し、拒否することなく付き合って下されば、それ以外は大きな問題にはなることはあまりありません。

心身ともに、とにかく気持ちいい時間の提供が出来れば受け入れて下さることが多いからです。

でもこの方は、手足に触れられることを嫌がらます。
「痛い、やめて」とおっしゃいます。

触れる前から、「痛い」と言われます。「まだ何もしてないんですけど」というと「そうやねん。うちもおかしいと思ってるねん」とおっしゃいます。

それから「あー」と叫ぶような声を出されました。
私は、まだ何もしていません。あんまり気持ちよさそうに叫ばれるので、「イライラしてはるんですか?声出すと気持ちいいんですか」と尋ねてみました。
「そうや。すっとするねん」と言われます。

この方は、表現されている態度と裏腹に冷静で筋の通った説明をして下さいます。

認知症のせいで大声を出したり身体に触れられることを拒否されているわけではないように思います。ご本人の意に反して関節を柔らかくしたりするなどの機能訓練が行われた結果ではないかと思います。

気持ち良さや身体のよくなるうれしさより、痛さだけが残った場合、とにかく痛いことから逃れるために、こんな風に表現される方に今までも何人かお会いしたことがあります。

こんな場合、まず穏やかになっていただくことが一番大切なのかなと思います。

優しい施術で、全身の緊張を解き、身体に触れること自体の信頼を得られるようにすることで、機能を含め、いろいろな面で好転していくのではと考えています。

結果ありきの関わりがこのように不信を基本とした関係を作ってしまうのだろうと思います。

個人的には、様々表現される認知症の方との関わりを楽しく感じています。
表現の仕方は人それぞれですが、お元気な時には、見栄とか建前で覆い隠していた本音が見えやすく、その素直さが羨ましくもありますし、またこちらの誠意も口先では全く通用しなくて真剣に向き合うことを要求されます。

そんなやりとりをマッサージ以上に楽しんで仕事させていただいています😊

 

贅沢ランチ

昨日は、患者様と贅沢ランチをしてきました。

仕事で様々な方との出会いをいただきます。

マッサージは、身体がリラックスすることで、口も軽くなっていただけることも多く、お付き合いが長くなると、友人ではないけど、その人のことをよく知る他人になることもあります、

そんなときは、私もついついリラックスして口が軽くなってしまいます。

プロフェッショナルに徹しなければと思いながらも、心地いい時間の流れについつい身を任してしまうこともしばしばです。

そんな時間の延長線上のランチ会食で、アルコール付きのお食事を堪能してきました。

私は、身体の中がどうなっているか、目に見えない筋肉を指先で感じ、そこをあるべき状態に戻していくことに取り憑かれているところがあります。
多分それは、解けない数式に出会った数学者のそれと似ていて、それは、誰かのために一生懸命というようなものとはまるで別なクレイジーな世界です。

でも、長い時間、この仕事を好きなまま毎日を過ごすことができているのは、クレイジーな魅力以上に、心の垣根が知らない間に溶けてしまうような患者様との時間のおかげなのだろうと思います。

本当にありがたいことです。
周りの全てに感謝の気持ちを忘れず仕事が続けていけますように、どうぞよろしくお願いします。

    

いっぱいおしゃべりしながらゆっくりいただきました。美味しゅうございました。

経脈・経穴を理解すること

息子の定期試験期間だったので、ブログの更新が出来ずに日が過ぎてしまいました。

私のテストじゃないのですが、なかなか子どもの自主性に任せられずにいます。
自分の幼少期を振り返り、もう少しサポートがあれば、もう少し上手に世界と向き合えていたような気がするので、息子が自分で飛び立てるまでは、様々サポートしてやりたいと日々余計なお世話を続けています。

私は、子どもの頃から、自分の中の秩序に合わないものを理解することが本当に難しく、幼児期に十進法を理解することは簡単だったのに、小学生の時に、そろばんの9の数字で数えて次の桁に移行することをどうしても理解することが出来なかったり、
ト長調の音符を理解した後、ドの位置が変わるへ長調がどうしても理解出来ず、ピアノの先生に叱られて、しばらくレッスンに行けなくなってしまったりしました。

マッサージの専門学校に入学してからも、東洋医学の抽象的な陰陽の概念は理解できるのだけれど、経絡・経穴が、どうしても頭に入らず、同級生が次々とその分野に詳しくなっていくのを尻目に、経絡・経穴に即した治療をすることをとりあえずあきらめることにしました。

筋肉についても、解剖学的に、その起始・停止・支配神経・作用を覚えることは必須項目であるにもかかわらず、断片的な知識が頭の中でグチャグチャに配置されていて、実際的に全く使えないものでした。

仕方がないので、とりあえず、実際的に患者様の身体からわかることを基本に、身体の動きと、筋肉の状態を私なりに組み立て、その経験を蓄積していくようにしました。

それから10年が過ぎるころ、筋肉の名前も経穴(ツボのことです)も覚えられないけど、ある動作の、収縮を必要とする筋肉の場所や、”どこ"を緩めれば効果的にどこの筋肉を緩めることができるかが経験的にわかるようになってきました。

この”どこ”かは、偶然にもツボの場所と一致していました。
按摩を教えて下さった鍼灸師の先生を久しぶりに施術させていただいた時に、私のやり方が教えていただいたやり方とは変わってしまったことを残念そうにおっしゃりながらも、その場所がツボと一致していることを教えて下さったのです。

それをきっかけに、経絡・経穴・筋肉名が、私に身近なものに近づきました。
不勉強で、まだまだ、全てを覚えることは出来ていませんが、経絡・経穴が気という目に見えない流れではなく、視覚的に確認することができるある有機的な繋がりをもとに構成されていると私なりに確信を持てる部分が見えてきたからです。

しかしながら、当たり前ですが、経絡・経穴というのは、私ごときが理解しているような浅いものではなく、何千年という経験や蓄積の上にある奥深いもので、気血の流れを調整することで、内臓にまで影響を及ぼすことができるものです。

それは、西洋医学の分類とは違う12の臓腑の経脈の気血の運行があり、12の臓腑は、陰陽の6つの臓腑の組み合わせで構成されています。
これらの運行の滞りを正すことで心身のバランスを整えることができると考えられています。

その気脈の流れは、西洋医学の解剖学的に理解できるものもあれば何故これがここを通るのだろうというものもあります。

その中の一つに、胸から手に至る、太陰肺経と手から顔に至る陽明大腸経があります。
呼吸を司る肺の経脈が手に至るのは解剖学的には当然のように思います。なぜなら呼吸補助筋は上肢の動きと一致するからです。
深呼吸をする時に手を広げたら深い呼吸ができるのはそのためです。

でも大腸の動きとなると、腰・腹部の筋肉にダイレクトに影響を受ける場所ですから、手というよりは、足の筋肉の動きが影響を与えると考える方が合理的な気がします。
実際、腹痛や、下痢・便秘の主治穴は下肢に多くあります。ですから、大腸経が手から始まり、顔で終わることも、肺経と陰陽関係にあるのも私にとっては、かなり不思議なことでした。

マッサージの施術は、患者様の自覚以外に、施術中のお腹の音やゲップ、おならなどを、身体の大きな反応として注意深く観察しながら行うことで効果をはかるのですが、近頃は、上肢をうまく緩めることが出来ると、下肢を緩めた時以上に、患者様から、便意を催してきたと言われる経験が増えてきたのです。

上肢の施術中に、お腹が動き、便意の訴えを頂く度に、下肢の施術より効果があることを意外に思いながら、先人の知恵の深さに驚かされていました。

そんな中で、更衣すら困難な拘縮のひどい方をマンネリの治療ではなく、なんとか呼吸だけでもより楽にすることで、全体の可動域を拡げられないかと、肩甲骨の動きにこだわりながら治療を始めて一か月が過ぎた頃に、予想を超えた出来事がありました。もう10年近いおつきあいのある患者様の経験です。

洗面器いっぱいくらいの便が出たと訪問看護師さんから報告を受けたのです。自力排便が困難なこの方は、週に一度の浣腸で排便をコントロールされていますが、その方史上一番の量だったそうです。

たまたまかもしれませんが、肩甲骨の動きを作ることで、呼吸が深く出来て、横隔膜が動いた結果、驚くばかりの便が出たのではないかと考えました。

これが、肺経と大腸経が陰陽関係にある理由なんじゃないかと、大発見をしたような気になっています。
本当のことは、これからの臨床を積み重ねないとわかりませんが、独りウキウキその後も臨床を楽しんでいます。

私にとって経脈・経穴を理解することは簡単ではありませんでしたが、臨床を積み重ねていく中で少しずつ東洋医学的な身体の理解が深まってきたように思います。

脳性麻痺患者様の発声

私の治療院に、脳性麻痺の患者様がいらっしゃいます。

とてもパワフルで、アクティブな方です。
小学校に行くことも出来なかったそうですが、ご両親の深い愛情に育まれ、障害をものともしない様々な経験をされたそうです。

60を超えた今も、買い物や旅行✈️に日々楽しく過ごされています。

そんな暮らしの中で、英語が話したくなったからと、英会話教室にも10年くらい通われていたそうで、海外旅行に行かれても、英語でのコミュニケーションに不自由はないそうです。

旅行先や外出先で、英語で話しかけても、相手にすぐ通じるとおっしゃいます。

けれど、私は、その方と話していて、話題が急に変わったりすると聞き取れない時があります。
申し訳ないのですが、何度か聞き返させていただくことも多々あります。

脳性麻痺の方は、緊張をうまく抜くことが出来ないために、発語するのにも力が入り過ぎて、発音が不明瞭になる方が多いのです。

それなのに、英語で話しかけて通じないことはないとおっしゃるのです。不思議に思って尋ねてみました。

「日本語と英語とどちらが話しやすいですか?」

「英語です。脳性麻痺の人は大概そうですよ」とおっしゃいました。

そうだったんです😵
脳性麻痺の方は日本語より、英語の発声に近い発声だったのです。

日本語は口の入り口近く、唇とその周辺で軽く発語する言語だと聞いたことがあります。

韓国語を習っていた時に先生が、韓国語や英語は発声自体に腹式呼吸があるので歌の上手い人が多いと教えて下さいました。

脳性麻痺の方は唇や舌を動かすことや呼吸に緊張を伴うので、いつも腹式呼吸になるので、英語の方が発語するのに近く、ネイティヴに近い発音になるらしいのです。

眼から鱗がおちるようでした。

日本人の多くは、街で突然、脳性麻痺の方に話しかけられたら、聞き取りにくくて、答えに窮するなんて場面は想像に難くありません。

なのに、英語で話したら、その場にいる外国人が難なく聞き取れちゃうなんて!

なんだかそんな場面を想像するだけで、楽しくなってきました。

パワフルなこの方は、今月末にも、介護のスタッフとともに、グアム旅行✈️に行かれます。

日本での話をしても聞き取ってもらえず、何度もいい直さなくてはならない日常のストレスから解放されて、ゆっくり楽しんで来られることをお祈りします。

ちなみに、脳性麻痺の方にリハビリをするのは、緊張を増強させ、症状を悪化させることもあるので、良くないと考える医師もおられます。
それほど、生まれついた時から、身体を動かすことに常に緊張を伴う方に、緊張をさせないように動作訓練をするのは困難なのです。

ですから、私の仕事は、いかに緊張を抜けるマッサージをすることが出来るかにかかっています。柔らかな刺激で全身の緊張を取り除き、リラックスした状態で四肢を他動的に動かすことで、四肢の拘縮の進行を食い止めるのが私の使命です。

まだまだ知らないことや、考えが至らないことがたくさんあります。
疾病や障害の身体に共感できる感受性をもっと育んでいくよう精進したいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。

至らないことがあると、空を見上げています。形にならない雲の自由で、美しい空を見ると自然と元気が湧いてきます。

ニキビとマッサージ、そしてミラクリーム

この頃は、思春期真っ盛りの息子たちのニキビが目につきます。

思春期の象徴ニキビかと思いきや、体質もあるのだろうけど、顔がうっ血することで悪化するという記事を読みました。それで、体質や食べ物だけでなく、生活習慣や、身体の使い方が大きく影響すると考えてみることにしました。

そう思って、息子のニキビを観察していると、なるほど、クラブでたっぷりの汗を流し、全身を使った日はあまり目立ちません。

でも逆に、一日中ゴロゴロしながら、うつむき加減にゲームに漫画・テレビに明け暮れた日が続くと顔いっぱいにニキビが目立ちます。

血行が大切なら、マッサージも有効なんだろうと考えて、手・肩・頸を中心に触ってみると、ニキビの目立つ息子のそれは、筋肉が事務仕事系のものになっています。

かわいそうだから、少しはほぐしてみますが、ランニングや自主トレをする方がずっといいに決まっているので、あまり乗り気になれません。
私も疲れているので、ゲーム肩をなんとかしてあげようという気にはなかなかなれないのです。
それでもマッサージの後はニキビの炎症が収まり小さくなっているのがわかります。

身体も心も大きく成長する大切な時期だから、出来ることは手を貸してやりたいなとは思うので、もう少しほぐしてやろうと思います。

手・肩・頸の血行を良くすれば、顔だけじゃなく脳の血行も良くなって頭もすくすく育ってくれるなら精を出して続けられるかも知れません。

訪問マッサージの仕事では、高齢者に対してマッサージを始めることで血行がよくなり、白髪がすっかり黒くなるということもよくあります。
若い人に対するそれは、脳を活性化させたり、ホルモンバランスを整えてくれることを期待してもいいのかも知れません。

いろいろな理由をつけますが、大手を振ってスキンシップをさせてもらえる最後のいいチャンスなのだから、喜んでしようと思います。

それから今日は最後に、取り扱っている商品の宣伝をさせていただきます。

息子のニキビが悪化しないで、なんとか保っているのは、実は、マッサージや身体の使い方だけではなく本当は、使っている洗顔石けんのおかげが大きいように思っています。

これは、前に訪問していた患者様が、
「先生、本当にきれいになりたい?
この洗顔石けんは本当に品質が高く、きれいになるから、販売員さんが、他に売らないでこっそり自分たちだけきれいになっている人がたくさんいる石けんなんですよ」と勧めて下さったものなのです。

そう言われたらどうしても使ってみたくなり、使ってみたら、一度ににファンになってしまいました。一番はやっぱりシワが目立たなくなったかなと思えたからです😊

ずっとその方に分けていただいてきたのですが、その方がお亡くなりになり、その頃には、私の知人もこの洗顔石けんファンになっていたので、自分で販売店になることにしました。ほとんどは、自身を含めた身内用なのですが。

この洗顔石けんのクオリティは本当に高く、シワ・シミが目立たなくなるだけでなく、殺菌作用が高いので、皮膚トラブルのあるところは全て、洗顔後の泡で一緒に洗うとものすごく調子がよくなるのです。
ワキガ・水虫・下のかぶれなど私の長年の秘かな困り事もこの石けんのおかげでかなり楽になっています。(恥ずかしながらカミングアウト☺️)

子どもが使うには少し高価な気もしますが、みんなで共有しても三カ月以上使えます。

治療院の一階の喫茶うずらでも販売しています。リピーターの方は会員価格でお分けしています。
ぜひお試し下さい。

ミラ クリーミー洗顔フォーム。
100g ¥4000

認知症の患者様にマッサージ師ができること

先日、患者様の認知症が進んで来たとご家族様からお話があった、とスタッフから報告がありました。

介護が長くなるとご家族様のライフスタイルも変化して来ます。その変化はダイレクトに患者様の生活にも影響します。
認知症の方の場合、自分の中で出来上がった生活リズムが変化することで、認知症が急に進んでしまうことがあるように思います。

こんな時こそ、少しでも患者様のお力になれるように、マッサージ師だからこそ出来る関わりを模索してもらいたいと思っています。

一番には、やはり身体が痛みや動きにくさがなく、ベストな状態でいていただけるように施術させていただくことじゃないかと思います。

足もとがおぼつかなくて歩くのに怖さを感じたり、痛みがあると身体は常に緊張状態にあり、頭の働きをますます低下させてしまうと考えています。
ですから、とりあえず、全身の緊張を取り除くことに全力を尽くすことが何より大切です。

その次には、座る・立つ・歩くという基本の動作を安心して行っていただけるように取り組みます。

怖さをどこで感じているのか、どこを助けてあげたら安心して座ったり歩けるのか、全くの私見ですが、大切なのは、頭なんだと考えています。頭の位置が身体に対してどこにあるのか、頭を支える力が安定的に働いているか、この二つが大きな要因ではないかと考えて、頚部がある程度自由に動くようにマッサージをし、頭を緊張が一番抜ける位置に支持できるように介助します。

また、なんとか歩ける方の場合は、痛みの原因を全て取り除くことが出来ないとしても、痛みの箇所に、体重がかからないように手助けしたり、足りない筋力を補うような介助をして、一緒に歩くようにしています。
部屋の中をほんの5分でもいいのです。
この先、一人で歩けるようになれないかも知れませんが、安心して歩けたという身体の記憶が脳に安心感を与えることが目的だからです。

このようにして、身体の安心・安定を施術中だけであっても感じていただけるように取り組んでいきます。
もちろん、施術中の動きがその後の転倒等のリスクに繋がることがあるので、ご家族様やケアマネジャーと話しながら進めていかなければなりません。

安心して動けない方に、マッサージ師が出来る関わりというのは、何かを勝ち取るためのリハビリ的関わりでなく、また、お元気な方に対するような、単なる揉み解しによるリラクゼーションでもなく、安心して動けることを目的に身体の緊張を取り除きながら安心して動ける時間の提供をすることではないかと考えています。

動くことに安心感が持てると、多くの場合に、認知症状に変化はなくても、穏やかになって下さる方が多いように思います。

そうなると、多くの方が、30分の施術時間に、嬉しそうに同じ話を何度も話して下さるようになります。
何年も訪問が続くときは、何百回も繰り返し聴くことになるのですが、それが、その方の人生で、一番聞いて欲しい、多分何回言っても言い足りない出来事なのだろうと思います。

ですから、何度も聴くそのエピソードではなくて、その奥にある気持ちに想いを馳せてうかがうように心がけています。
出来るだけ、「またか」と思わないように、初めて耳にする話のように聴くのは簡単なことではありませんが、多分この聴くことが、本当は、マッサージより何より一番の治療になっているような気がします。

長い人生の最後、多くの困難を超えた最後の時間を認知症であっても、笑顔で穏やかに過ごしていただけるお手伝いが少しでも出来たら、本当に幸せなことだと思っています。ですから、同じ話に、たまには違う返事や相槌が打てるよう心を込めて同じ話を伺いたいと思っています。

訪問させていただいている特養のディスプレイ。いつもセンスの良いディスプレイに入居者を大切にしようとされている愛を感じます。

マッサージ治療の効用を知ってほしい

お医者様の奥様で疲れが溜まるとマッサージを受けに来て下さる方がいらっしゃいます。

先日いらした折、お医者様はマッサージが好きではない方が多いように自分が感じている事を伝えてみました。
なぜなら、湿布や薬、後は自助努力でなんとかしたいと考えておられる方が多いからです。

奥様は、「確かに、他力本願はいけない、自分で努力しないといけない、マッサージに頼りっぱなしで癖になるのは良くないのではと思っているかもしれないですね」と仰っいました。

なるほど、
マッサージを単にリハビリの代用だと考えると、
自分で努力しないで、マッサージ施術を与えてもらうだけは他力本願になるかもしれません。
骨格器の疾患に対しては、
基礎的な筋力をきちんと維持していくことが何より大切なので
そうお考えになるのも当然です。

しかし、マッサージ治療は、
単なるリハビリの前座的な筋肉ほぐしの施術ではありません。

患者様の筋肉の弾力性に合わせて、
力強く張っている人は、張りを和らげ
力が弱くてオーバーワークの筋肉には、無理な緊張から解放し、
弱々しくはね返す力もない筋肉には優しく張りを与える
そういうことが可能な、
筋肉をベストコンディションに近づける事が出来る治療法です。

筋肉は、加齢や障害・オーバーユース(使い過ぎ)により、
筋肉を包んでいる筋膜に捻れを生じてしまいます。
これは、筋肉が、拮抗する2つの筋肉の収縮と弛緩により、
力の入らないゼロの状態に戻るように出来ているにもかかわらず、
そのバランスが崩れ、一方向の動きが、優位に働き続ける結果です。

ですから、そのバランスの崩れた状態のまま、
筋トレなどを続けるとバランスの崩れを強調してしまうことになります。

ジムのマシーントレーニングを続け、
素晴らしい筋肉を手に入れていらっしゃる方が
肩や腰の痛みを訴えることは
よくありますが、それはこのような理由からなのです。

また、脳卒中後遺症の方が、不自由な手足の克服のために、
傾いた姿勢のまま、長い時間、歩き続けた結果、
身体が元に戻らないくらいに歪んでしまうのも、
同じ理由がその発生機序だと私は考えています。

マッサージはこの筋膜の捻れに対して大変有効な治療法ですから、
全てを治療することが出来ないとしても、
バランスの崩れた状態をゼロに近づける事が出来るのです。

ですから、施術を終えたすぐ後より、
そこを起点に、身体を使っていただいた数日後のほうが、
状態がよくなっているということもよくあります。

そのとっかかりは他力本願かもしれませんが、
その後で身体の中で変化を起こすのは、自分自身の力です。

お医者が処方される抗生物質が、
その治療のとっかかりを与え身体を助けるのと同じです。

ただ、抗生物質と違うのは、
誰でもが誰にでも同じ結果を与えることが難しいことと、
手間暇かけた丁寧な時間を必要とすることが大きな違い、でしょうか。

多くのお医者様にも
心地いい、
それでいて身体が軽くて若返った気持ちになるようなマッサージを
体験していただけたらいいなぁと思います❣️

私は奥様にマッサージしながら、
上記のような話をさせていただきました。

術前
術後
頚椎のカーブが少しですが、柔らかくなっています。このわずかな変化が身体の中でダイナミックな変化を引き起こすのです。

マッサージの力

日曜日は、京都府鍼灸マッサージ師会の総会がありました。
会の活動に、多くの協力はできていませんが、せめて総会くらいは参加しようと思って参加してきました。

質疑応答の時に、会員の方から、訪問マッサージについての質問がありました。
現場で起きている困り事に、会としてどう対応してもらえるのかという質問でした。
その方が話の中で「昨年の田中美香先生のような訪問マッサージに力が湧いてくるような話をして欲しい」というような趣旨のことを言って下さっていました。

総会のような場で、私の名前が出てくるなんて思ってもみなかったので、うれしはずかし、びっくりでした。
私の言葉が、聴いてくださった方の、記憶にとどまり、何かしらの役に立てているなら、本当にうれしいことです。

こんな風に私の話が力強く感じるとすれば、それは、私がマッサージの力を信じているからじゃないかと思います。

マッサージが、本当に様々な力を持った素晴らしい手技だという思いは、年を追うごとに確信に近づいています。

マッサージは、痛いところに自然に手を当てるというような、何の道具も必要としない、誰でもが出来る手技であるが故に、また、コミュニケーションの大きな役割を果たすという側面があるが故に、身体の治療にかかわる様々な場面で、様々な職種の方が用いることが多く、特別な技術を必要としないと勘違いされることがあるように思います。

在宅医療に関して言えば、そこに関わる全ての職種の方が、なでる・さするを含め、マッサージ施術をされます。
理学療法士の先生はもちろん、看護師も、歯科衛生士も介護士さえも、目的を果たす手段にマッサージをされているのを目にします。

そんな中でマッサージを専門とする私たちは専門家にしか出来ないマッサージをしていかなければならないと思います。

まだマッサージを始めた頃、勤め先の院長から、
「鍼灸マッサージ師は、痛み治療に対し、鍼灸に逃げることが出来る。マッサージ師の資格しかない施術者は逃げ道がないからこそ、マッサージの腕が上がる」と言われました。

私はこの言葉を心の支えに、逃げずに、諦めずに、筋肉と向き合い続けてきました。

最初の頃は、変形したり、拘縮した膝の中や、その周囲でどんなことが起きているのかさっぱりわかりませんでした。本を読んでも全くわかりません。じっと観察しても、全くさっぱりわかりません。

ある時手を当てると、その下で動く筋肉の様子がわかることに気がつきました。
それからは、立ち上がりや自動運動をしてもらう時、両手で膝を包み込み、どの筋肉が働いているのかを”観る”ようになりました。

マッサージをした後の動きの変化や、どの部位をマッサージしたらどう変化するか、あるいは、立ち上がり方によってどの筋肉が動くのか、何度も何度も確認させてもらいました。
患者様は、うんざりだったかもしれませんが、私のあまりに必死な態度に、皆様嫌がらずにお付き合いして下さいました。

そんなことを始めて15年くらいが経ちました。そのおかげで、今では身体の動きと、筋肉の収縮の関連がある程度わかるようになりました。

身体の歪みを調べたり、病歴を聞かなくても、筋肉の状態からある程度のことがわかるようにもなりました。
まだまだ毎日発見の連続ですが、それもこれも、私にはマッサージしかないという覚悟のおかげじゃないかなと思います。

皮膚の下にあり、眼には見えない筋肉を治療するのは簡単なことではありませんが、私たちマッサージ師は、マッサージを業としてすることのできる唯一の国家資格者です。
諦めずに筋肉と向き合っていきたいと思います。

その先には、 必ず、単にマッサージを一つの手段として行う職種の人たちとは、一線を画する資格者の道が開かれていると思っています。

ネコ大好き。マッサージ。
指先の記憶は、脳の記憶よりはるかに優れています。そのために特別な訓練をしたわけではありません。毎日来る日も来る日もマッサージを続けた全てが指先に宿るだけなんです。地味な職人仕事です。

嬉しい京都マラソンボランティアのアンケート

京都マラソンボランティアのアンケート報告集が送られてきました。

鍼灸マッサージ体験者955名のアンケートを
京都府鍼灸マッサージ師会の事務局と実行委員の人が集計・編集して下さいました。

大変なご苦労だと思うのですが
中でも一番ありがたいのは体験者の一言を全て転記して下さっていることです。

その声の多くが、この取り組みを高く評価して下さっています。

これを読むと本当に嬉しくて、
自分たちの仕事を心から誇らしく思えると共に、
それぞれの施術師のみなさんの高い評価を目にして
私もより一層の努力を積み重ねていかなくてはと思うのです。

多くの仕事がコンピュータ化の波にのまれて消えていっている中で、
肌に触れ心に触れるこの仕事は、
健康サプリメントや電動マッサージ機や、
その他の治療機にはとって変えられないものだろうと思います。

巷には
経験の浅い無資格者による
安くて施術時間も短いクイックマッサージがあふれていますが、
需要があるから流行るのはどうしようもありません。

お寿司屋さんのお寿司が、
回転寿司やスーパーのお寿司とは比べようもなくても、
値段の安さには勝てないのと同じかなとも思います。

本当に必要とされるものは必ず残るだろうし、
自分たち自身が、
資格を持っているということに甘んじることなく、
本当に必要とされる技術を磨き続けていかないといけないのだと思います。

そして
自分たちの技術が
資格のないアルバイトのような技術とはまるで違うということを
アピールしていかないといけないのだろうと思います。

来年の京都マラソンではもっと多くの方が鍼灸マッサージ体験にきて下さいますように。

そしてもっともっと多くの施術者の参加がありますように。

京都マラソンボランティアの場を与えて下さった全ての方々に感謝申し上げます。
ありがと〜❣️